ニジェールサウルスは、見た人を惹きつけるユーモラスな顔をした恐竜です。
一度見たら忘れられないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
「顔以外の特徴は?」
「もっと詳しく知りたい!」
など、疑問を持たれた方に、ニジェールサウルスの顔の特徴と共に下記について詳しく解説しています。
・ニジェールサウルスの大きさ
・ニジェールサウルスはなにを食べていたの?
・ニジェールサウルスの生息地
・ニジェールサウルスは強かったの?
目次
ニジェールサウルスの基本情報
引用:恐竜図鑑
まず、基本情報は、次の通りです。
分類 | 竜盤目 竜脚亜目 ディプロドクス上科 レッバキサウルス科 |
学名 | Nigersaurus taqueti |
生息年代 | 中生代 前期白亜紀(約1億2500万〜約1億1000万年前) |
生息地 | アフリカ(ニジェール共和国) |
繁殖形態 | 卵生 |
ニジェールサウルスは、前期白亜紀にアフリカ大陸で生息していた四足歩行の恐竜で、竜脚類に分類されています。
竜脚類とは、30mを超える種類もいるほど大型で重量級、長い首と尾を持つ種類の草食恐竜のことです。
ニジェールサウルスの大きさと骨格
ニジェールサウルスは、いったいどのような大きさだったのでしょうか。
さらに、ニジェールサウルスの体の基礎部分である骨格についても解説します。
全長と体高、体重、体型
ニジェールサウルスは全長約9m・体高約2.4m・推定体重5t と竜脚類の中では小型の恐竜です。
なお、全長については従来は約15mとされていましたが、下記の通り修正されています。
※本誌12月号の出版後、ニジェールサウルスの推定体長は、科学者たちによって15メートルから9メートルに修正された。
象の体に長い首と長い尻尾がついたようなどっしりとした体型で、体の大きさもアジア象ほどでした。
(アジア象の大きさは、体長5.5〜6.4m・体高2.5〜3.0m・体重4〜5t)
引用:象の森 虫の森 人の森
なお、化石をCTスキャンで調べた結果、ニジェールサウルスの顔は首に対して90度の角度でついており、地面に垂直に向かっていたことがわかっています。
他の恐竜は鼻の突き出た構造なのに対し、全く異なるものでした。
繊細な骨格
引用:wikipedia
どっしりとした体型からは想像もできませんが、ニジェールサウルスの骨格は、多くの研究者から注目を浴びるほど大変軽く繊細な構造をしていました。
脊椎には空洞が多くみられ、見た目よりもはるかに軽量化されています。
頭部にいたっては人間の頭蓋骨の厚さが平均5mmあるのに対し、ニジェールサウルスの頭骨は2mm未満のところが多く、とても薄いものでした。
骨格がこれほど繊細だと日常生活にも困難に思われそうですが、研究者によると問題はなかったとされています。
頭部の軽量化は首を動かすのに負担がかからないように進化した結果と考えられます。
ニジェールサウルスの餌
ニジェールサウルスが食べていたものは、地面に広がって生えていた『若いシダ』『スギナ』『トクサ』など柔らかい植物であったと考えられています。
生息していた前期白亜紀は高い木の葉などを食する大型の草食恐竜も多かったため、それらの恐竜との食べ分けを行なっていたのでしょう。
ニジェールサウルスの口と歯の特徴
さて、ニジェールサウルスの最大の特徴といえば、平べったい口と横一直線に並んだ多数の歯ではないでしょうか。
この特徴は、見た目の個性だけではなく、植物をたくさん食べるためだったと考えられます。
掃除機の先のような形をした口
引用:大恐竜展
ニジェールサウルスの口は横に平たく、鼻が潰れた形をしています。
見た目の特徴から、「掃除機の吸い込み口」「目玉クリップ」「草刈機」などと例えられています。
この個性的な見た目から小さなお子さんや女性のファンも多いそうですよ。
うさぎちゃんのこころをつかんではなさなかったきょうりゅうは、ニジェールザウルスたんでした。掃除機の口みたいな一列に並んだ歯のふしぎなこと!
— MAYUMI IUCHI (@usagitokio) August 17, 2011
500本以上生えている歯
次に口の中を見てみると、歯は櫛のように横一直線に隙間なくびっしりと並んで生えています。
さらに詳しく見ると、太さ3mmほどの小さな歯が、上顎に約60本、下顎に68本並んでいます。
なんと、その1本1本の歯の後ろには多いところで10本もの予備の歯が生えていました。合わせると全部で500本以上になります。
この歯の構造はデンタルバッテリーと言い、角竜類や鳥脚類などによくみられます。
竜脚類でデンタルバッテリーを持っていたのは、ニジェールサウルスだけと言われています。
引用:恐竜の話題
個性的な口と歯は食べるための進化だった!?
これらの特徴は植物をたくさん食べるための進化であったと考えられます。
口が幅広く平べったくなった理由は、地面に口を密着させて植物を食べるためと考えられています。
歯が一直線に生えている理由は、植物をむしり取るように素早く食べるためと考えられています。
ニジェールサウルスは植物をむしり取るように大量に口に入れ、噛まずに飲み込んでいたのでしょう。
ニジェールサウルスの生息地と名前の由来
ニジェールサウルスの化石は、アフリカ北部のニジェール共和国の北東部にあるサハラ砂漠、約1億1000年前の地層エルハズ層から発見されています。
現在は砂漠ですが、当時は森林地帯でした。
引用:Panasonic
ニジェールサウルスは、1950年代に初めて化石が発見され、1967年フランスの古生物学者 Philippe Taquet博士によって発表されていましたが、1976年にようやく名前がつけられました。
学名のNigersaurus taquetiはPhilippe Taquet博士にちなんで、シカゴ大学教授で古生物学者のポール・セレノ氏が名付けました。
その後、ポール・セレノ教授らの調査により、1997年と2000年に幼体と成体の化石が発見されました。
この時骨格の8割近くが収集されたため、ニジェールサウルスのほぼ完全な形の姿を想像することができるようになりました。
ニジェールサウルスは強かったの?
結論から言うと、ニジェールサウルスは強くはなかったが、ある程度の防御力はあったのではないかと考えられます。
というのも、ニジェールサウルスが生きていた時代、エオカルカリアという全長6m〜8mの獰猛な肉食恐竜がアフリカ大陸を支配していました。
引用:恐竜のデジタル図鑑
エオカルカリアは、強靭な四肢とサメの歯のような鋭利な刃物状の歯で獲物を仕留め、切り裂く恐ろしいハンターでした。
ニジェールサウルスが発見された地層からも、高確率でエオカルカリアが属するカルカロドントサウルス類の化石が算出していることから、同じ場所で生息していたと考えて間違いないでしょう。
ニジェールサウルスの大きさは約9mですから、体格差もほとんどありません。
骨格も繊細なため、格好の獲物だったのではないでしょうか。
しかし、ニジェールサウルスは個体数も多く繁栄していたと考えられています。
象のようにがっしりとした四肢と、長い尾を振ることによって自らを守っていたかもしれませんね。
大きな竜脚類の特に尾の長い種は、尻尾での攻撃の際に先端がソニックブームを起こす(音速を超える)ほどの速度に達したとされています。
ニジェールサウルスは竜脚類の中では小型のため、ソニックブームを起こすほどではありませんが、尻尾にある程度の攻撃力は保持していたのではないでしょうか。
まとめ
今回は、ニジェールサウルスについて下記のことを解説しました。
・全長約9m、体高約2.4m、推定体重5t、象に長い首と長い尾がついたような体型だった
・骨格は繊細で空洞が多く、頭蓋骨は紙のように薄かった
・個性的な顔は効率よく食べるための進化であった
・食料はやわらかいシダ、スギナ、トクサ
・名前の通り、ニジェールに生息していた
・ニジェールサウルスは強くはなかった
ニジェールサウルスは、日本では2009年に東京の上野国立科学博物館で開催された「2009年大恐竜展」で展示され一躍人気者になりました。
今現在は国内で展示を見ることはできませんが、また日本でも展示してほしいものです。
ニジェールサウルスについて知りたいことはわかりましたか?