引用:始祖鳥|アーケオプテリクス(Archaeopteryx)|恐竜図鑑
化石の研究において、ずっと注目され続けているのが始祖鳥(アークテリクス)です。
その最大の注目ポイントは、始祖鳥が鳥なのか、恐竜なのかということではないでしょうか。
実際、様々な説があって、多くの恐竜ファンに注目されています。
そこで今回は、
・始祖鳥の特徴について
・始祖鳥の羽毛について
・始祖鳥が鳥か恐竜か議論されているポイントについて
・始祖鳥の体の秘密について
について、それぞれ解説していきます。
目次
始祖鳥の特徴は?生息期から大きさまで詳しく解説
まず、始祖鳥の基本データを見てみましょう。
生息期 | 中生代ジュラ紀後期(約1億5000年前) |
生息地 | ヨーロッパ(ドイツ) |
全長 | 約50㎝ |
体重 | 約500g |
そうなんです、始祖鳥の大きさは約50cmでカササギに近いとされています。恐竜であると議論がされている化石なので、大きいものを想像する人が多いかもしれませんが、今いる鳥類とさほど変わらない大きさであった可能性が高いと、言われています。
始祖鳥は羽毛があり恐竜?議論のポイントと体の秘密をチェック
#化石の日
続いてアーケオプテリクス(始祖鳥)。最も最古の原始的な鳥類で、恐竜のような歯やカギ爪、長い尾が特徴的です。
爬虫類(恐竜)から鳥類への進化を示す化石として、進化論が提唱された19世紀から注目され続けている化石です。 pic.twitter.com/Cmoms4jX84
— uoichiba (Yuta Tsukiji) (@uoichiba1027) October 15, 2020
たしかに、特徴だけを見ると、鳥類に感じてしまいますよね。しかし、現在は恐竜説が有力とされています。
とはいえ、研究者の中には鳥類説を唱えている人がいるのも事実です。
先ほど紹介した特徴からも分かる通り、始祖鳥は恐竜と鳥類両方の特徴を兼ね備えているからです。
ではここで、始祖鳥の恐竜と似ているポイント、鳥類に似ているポイント、それぞれについて、詳しく説明していきます。
始祖鳥の秘密~恐竜と似ているポイント~
始祖鳥が恐竜と似ている点は、4つあります。
・鋭い歯のある顎
・鉤爪(かぎづめ)のある指
・尾に骨がある
・長い後肢と長い尾があり走りやすい体型
始祖鳥は基本的に雑食だと考えられていて、昆虫や小型の爬虫類・哺乳類などの小動物を細かい歯を用いて食べていたとされています。
恐竜の分類において、細かい歯を持つグループが存在しており、このグループも小動物を食べていたとされています。加えて、翼を持った恐竜の化石からも様々な小動物を食べた痕跡が発見されていて、始祖鳥は恐竜なのではないかという議論が続いていることがわかります。
また、長い後肢と長い尾も肉食恐竜と同じ特徴となっており、恐竜説を強力にしています。
始祖鳥の秘密~鳥類と似ているポイント~
始祖鳥には、鳥類に似ていると言われている点は、次の5つです。
・風切羽(かざきりばね)を持っている
・薄い羽が全身に生えている
・前肢が長く、翼になった
・骨格が軽量化した
・大きな脳を持つ
始祖鳥の風切羽には、現生鳥類の翼に確認される3つの構造の羽枝・小羽枝・小鉤があります。これだけの特徴を備えた始祖鳥なら、恐竜説だけでなく鳥類説も有力視される理由もわかりますね。
また、鳥類は空を飛びやすくするように、骨の割合がなるべく少なくなるような骨格になっていますが、始祖鳥にもその特徴が見られます。そのことも鳥類説を後推ししていると言われています。
ただし、実は始祖鳥は空を飛べなかったのではないか、とも言われています。
たしかに飛べない鳥もいますが、やはり飛べなかったというのは、鳥類だったという可能性を下げる要素であることは、間違いありません。やはり恐竜説が有力であると考えて、問題ないでしょう。
始祖鳥に化石標本はある?詳細と展示している場所も紹介
始祖鳥の化石標本が見つかっているのかどうかも、気になりますよね。
結論としては、始祖鳥の化石標本は見つかっています。
始祖鳥の化石標本は、現在世界に7つ確認されています。その中で最も有名なのはベルリン標本で、研究対象となっている唯一の化石標本です。
ここで、そのベルリン標本についてと、その他6つの標本について、説明していきます。
ベルリン標本
ベルリン標本は1877年に発掘された始祖鳥の化石で、標本の中では2番目に発掘されたものとなっています。現在はベルリンのフンボルト大学付属博物館で保管されており、保存状態が良好なため研究に用いられています。
脚部全体にズボンのように生えた羽毛が特徴となっています。
また、背側にも羽が生えていて、これは現生鳥類と同じ特徴です。
しかし、上記の羽毛以外の羽は原始羽毛のみとされており、恐竜のシノサウロプテリクスの構造とほとんど同じとされています。
その他の標本
ヨーロッパ各地で発見されている、その他6つの標本についても紹介します。(発掘・発表年代順)
・ロンドン標本(1861年発掘)
この標本は、ロンドンの自然史博物館に保管されています。
生で始祖鳥見たときは、まぢ感動した pic.twitter.com/2RY5d9Fun9
— BOM!!(フラウブラン) (@damedameBOM) October 15, 2020
・マックスベルク標本(1956年発掘)
この標本は、唯一、個人蔵の標本です。
・テイラー標本(別名:ハールレム標本 1970年発表)
もともと1855年に破片が発掘されていましたが、正式に化石と認められたのは100年以上あとの1970年のことです。
・アイヒシュテット標本(1973年発表)
この標本ももともと1951年に発見されていましたが、別の恐竜の化石と誤認されていたため、発表が遅れました。
・ゾルンホーフェン標本(1988年発表)
発見自体は1960年代でしたが、始祖鳥と確定されたのは1987年です。現在確認されている標本の中で最大の大きさとなっています。
・バイエルン標本(別名:ミュンヘン標本 1993年発表)
1992年に発見され、翌年に発表された最新の標本です。
実際、日本で始祖鳥の化石は発見されていません。しかし、中国ではそれらしきものが見つかっており、日本にも生息していた可能性はあります。
まとめ
今回は、始祖鳥のさまざまな特徴についてと、恐竜か鳥類かの分類ポイントついて説明してきました。
まとめると、
・始祖鳥は鳥類と恐竜の両方の特徴を持っている。
・全身に生えている羽毛が鳥類説を強調しているが、細かな歯や肉食恐竜と同じ特徴も持つなど、総合的には恐竜説が有力となっている。
・化石標本はヨーロッパを中心に発見されており、日本ではまだ見つかっていない。
ということがお分かりいただけたかと思います。
始祖鳥の名の通り「鳥」であるのか、それともやはり「恐竜」なのか、これからの研究に注目です。