引用:Amazon
イクチオサウルスは絶滅してしまいましたが、発掘された化石から分かることがたくさんあります。
この記事ではイクチオサウルスの特徴、次々発見される新事実、イルカと関係があるのかどうかをご紹介します。
・イクチオサウルスの特徴
・イクチオサウルスの新事実
・イルカと関係してるのか?
について解説していきます。
目次
イクチオサウルスの特徴
引用:イクチオサウルス(Ichthyosaurus) | 恐竜図鑑
海の中に棲み生きていたイクチオサウルスは絶滅してしまいました。今となっては化石から推測するしかりませんが、それでも様々なことが分かります。
・イクチオサウルスの概要
・イクチオサウルスの姿
・イクチオサウルスは卵胎生
上記3点について解説していきます。イクチオサウルスがどんな生物だったかが分かるようになりますよ。
イクチオサウルスの概要
概要
名前 | イクチオサウルス |
分類 | 魚竜類、爬虫綱、双弓亜綱(そうきゅうあごう) |
生息年代 | 中生代三畳紀末レーティアンからジュラ紀前期プリンスバッキアンにかけて(2億600万~1億4000万年前) |
生息地 | [2]ヨーロッパ(ベルギー・イングランド・ドイツ・スイス)とアジア(インドネシア) |
全長 | 約2m、3.3mを超える場合もある |
体重 | 約90kg |
食べ物 | 魚類・イカなど |
繁殖形態 | 卵胎生 |
恐竜より早くから存在していましたが、絶滅も恐竜より早く生き残れなかったようです。
ジュラ紀に栄えた魚竜は白亜紀には絶滅しました。原因は気候の不安定化と進化の速度の低下だと言われています。
陸生爬虫類として生きていましたが、長い時間をかけて海に適した体になりました。
魚竜の祖先が陸生爬虫類だと分かってはいるものの、詳しいことは不明です。これから先、研究が進むことで明らかになるかもしれませんね。
イクチオサウルスの姿
引用:Amazon
イルカと似ていると思うと、イクチオサウルスを身近に感じるのではないでしょうか。海の中で生きるために適応したイクチオサウルスは、一体どんな体の特徴を持っていたのでしょう。
イクチオサウルスの特徴
・現生のバンドウイルカによく似たフォルム
・30cmの巨大な目
・立派なヒレがある
・100本の歯が並ぶ
・高い聴力がある
このような特徴を備えていることが分かっています。
現生のバンドウイルカによく似たフォルムを持っています。海の中を泳ぐのに適しており、四つのヒレを使っていました。
イクチオサウルスの目は30cmの大きさで暗視能力がありました。暗い所でも見えるため、深海まで潜って獲物を捕らえることもできたようです。
イクチオサウルスは大きな背びれがあります。前脚と後ろ脚がヒレ脚となっていますが、後ろ脚が大きく前脚は小さいという身体的特徴があります。
イクチオサウルスの尾びれは垂直に立ち上がっていますが、この形が現在のサメとよく似ていますね。海中で素早く泳ぐための大切な部位です。
イクチオサウルスの口はイルカと同じように細長いですね。口の中には100本の歯が並んでいますが、魚類やイカを主な獲物としていました。
イクチオサウルスには硬い耳骨があったようですが、外部から伝わった音を内耳に伝搬させる働きがあったため、高い聴力を備えていたのではと言われています。
イクチオサウルスは卵胎生
卵胎生とは胎内で卵を孵化させ、幼体となってから体外に出る繁殖形態です。
卵から孵化したイクチオサウルスの胎児は、海の中で生きていけるようになってから出てきます。胎児は尾から産まれることで、溺れないようにしていたようです。
何頭産むかについては、まだまだ分からないことが多いようです。
妊娠中のイクチオサウルス化石https://t.co/jvelrpK0Df
少なくとも6、おそらく8 pic.twitter.com/YibtuyG54R— ゆきまさかずよし (@Kyukimasa) April 5, 2018
イクチオサウルスの新事実
イクチオサウルスの化石は、イングランドで暮らすメアリー・アニングとその兄ジョセフ・アニングにより初めて発見されました。1811年から1812年にかけてです。
Ichthyosaurus
茨城県自然博物館
ジュラ紀のイクチオサウルスイクチオサウルスの
最初の全身をみつけた
12歳のメアリーアニングAt Lyme Regis,
Mary Anning
Coming upon the first Ichthyosaurus found in England
(Charles Edmund Brock) pic.twitter.com/4T6JHQa1Gn— Cecilia (@Cecilia723flute) November 24, 2020
その後もあらゆる場所でイクチオサウルスの化石は発見されますが、今までの研究が覆されるような発見もあります。
・【2010年】イクチオサウルスは巨獣捕食者
・【2016年】巨大イクチオサウルス
上記の2点を解説していきます。イクチオサウルスに関する新しい発見は面白いですよ。
【2010年】イクチオサウルスは巨獣捕食
2010年、中国南西部・貴州省で発見された化石が話題を呼びました。
全長5mほどのイクチオサウルスのお腹の中から、全長4mと推定される水棲トカゲの化石が出てきたからです。
イクチオサウルスの獲物は魚類やイカだけではなかったんですね。ここで大きな獲物も食べていたことが分かり、研究者の間でも驚きの声が上がったようです。
これは記録最古の「巨獣捕食」だと言われています。
古生物者は生物が何を食べていたのか推測する時、歯の形と大きさから調査します。
イクチオサウルスの歯は小さな歯が100本ほど並んでいます。鋭くもないので、自分より大きな獲物を捕食するのに向いていないと思われていました。
【2016年】巨大イクチオサウルス
2016年英サマセット州の海岸で、巨大なイクチオサウルスの化石が発見されました。
骨の一部から推定して、約26m、現在もっとも巨大とされているシロナガスクジラに匹敵すると言われています。
魚竜とは、ジュラ紀の頃、一億年以上の長きに渡って海の頂点に君臨していた爬虫類。ちなみに26メートルの巨大なイクチオサウルスの化石が英国で発見されたそうです。 https://t.co/K397CH7ds1
— 宗方仁志朗(Munakata Jinshiro) (@OnWaizumeru) January 30, 2019
一番大きい魚竜はカナダで発見されたショニサウルス(全長約21メートル)だと言われていました。
見つかったのは骨の一部です。体の一部しか発見されていない生物の大きさを推定するのは難しく、史上最大級の動物のひとつとしているようです。
イルカと関係してるの?
イクチオサウルスとイルカは収斂進化です。収斂進化とは、全く違う種の生物であっても生息する環境が同じであるなら、同じような形に進化することをいいます。
収斂進化とは異なる生物、類縁関係の遠い生物でありながら、似たような器官・体系をもつことです。
食物や環境の影響が大きいと言われていますが、哺乳類のイルカと爬虫類のイクチオサウルスがまさに同じ環境で生き、似たような食物を食べています。
イクチオサウルスは海棲爬虫類ですが、祖先は陸生爬虫類であり、世界的な大量絶滅の際に海に適応したのではと言われています。
イクチオサウルスとイルカの比較
イクチオサウルスはイルカの祖先ではありませんが、共通する項目がたくさんあります。一緒にイクチオサウルスとイルカの違いも見ていきましょう。
名前 | イクチオサウルス | イルカ |
分類 | 魚竜・海棲爬虫類 | 哺乳類 |
全長 | 2~3m | 1.3m~10m |
体重 | 約90kg | 30~300kg |
食性 | 魚類・イカ | 魚類・甲殻類 |
ヒレ | ヒレ状の後肢があり、尾ビレに骨がある。肉質の背ビレ。 | 胸びれ=前脚、背びれ、尾びれ |
目 | 巨大な目(30cm)で強膜輪におおわれている・暗い所でも見える | 小さな目・暗い所でも見える |
歯 | 100ほどの小さい歯 | 8~250本の歯 |
聴覚 | 聴覚は発達している。コミュニケーションについては不明。 | パルスを発しエコーロケーションができる、高いコミュケーション応力がある |
獲物を捕る方法 | 視覚に頼る | 視覚と優れた聴覚を使う |
イクチオサウルスとイルカは、海の中で適応するため似たような性質を獲得しました。
イクチオサウルスの目は大きく30cmほどありますが、暗い所でもよく見えるので光の届かない深い海の中でも獲物を捕らえることができたようです。
この点はイルカも同じです。目のサイズは小さいですが、暗い海の中でも見る能力があったようです。
ただしイルカはエコーロケーション(反響定位)という特徴があります。
イルカは自分で音を出しますが、岩やものにあたり、跳ね返ってきた反響を捉えます。反響音からものの位置・大きさ・材質が分かるため暗くても素早く動くことができます。
この時発する、高い周波数のパルス音を使うことで高いコミュニケーションが可能となっています。
イルカは大きな群れを形成しますが、群れを効率よく統率し維持するためにコミュニケーション力を駆使しました。
視覚に頼っていたイクチオサウルスとは違い、イルカは優れた聴覚も使っています。
イクチオサウルスは恐竜ではない
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学術的に言うと、恐竜は「直立歩行する爬虫類」だと言われています。
骨盤の穴に大腿骨がしっかりはまっているのが恐竜の特徴です。真っすぐに立つことができるため、陸上で走ることが出来ました。食べ物を探しやすく他の爬虫類よりも優位に立てたようです。
イクチオサウルスは骨盤に穴があいておらず直立歩行ができません。直立歩行は脚が関節で曲がらず真っすぐ立っている状態を言います。
翼竜プテラノドン、首長竜エラスモサウルスも、イクチオサウルスと同じく恐竜ではありません。
まとめ
イクチオサウルスの特徴やイルカと関係してるのか、恐竜じゃないとはどういうことなのかをご紹介しました。
ポイント
・イクチオサウルスは収斂進化をした水棲爬虫類
・イクチオサウルスは卵胎生
・イクチオサウルスはイルカと似ているが別の種の生物
・イクチオサウルスは恐竜ではない
イルカと似ていますがよく見てみると違う点もたくさんあります。なぜ似ているのかというと、収斂進化した生物だからです。
環境や食べ物が影響を与えたようですが、今いる環境に適応するためには自然な進化だったのでしょう。
イクチオサウルスが恐竜ではないと知って驚きましたが、これからも発掘調査や研究は進んでいきます。また新しい事実が分かって驚くことになるかもしれませんね。