引用:恐竜図鑑
大きな体を支える丈夫な後ろ脚に、短すぎる前脚、そして獰猛な顔つきは、ティラノサウルスを思わせる見た目です。
その見た目の通り、ビスタヒエヴェルソルはティラノサウルスの仲間です。
しかし、ティラノサウルスとは違い、ビスタヒエヴェルソルの名前はあまり耳にすることはありませんよね。
いったいどんな恐竜なのでしょうか?
大きさや食べていたものなど、気になる方も多いのではないでしょうか?
そんな方に向けて、この記事では
・ビスタヒエヴェルソルの特徴
・ビスタヒエヴェルソルの大きさ
・ビスタヒエヴェルソルの餌
・ビスタヒエヴェルソルの名前の意味
などについて解説していきます。
目次
ビスタヒエヴェルソルの基本情報
学名 | ビスタヒエヴェルソル・シーレイ(Bistahieversor sealeyi) |
分類 | 爬虫綱、双弓亜綱、主竜形下綱、恐竜上目、竜盤目、獣脚亜目、ティラノサウルス上科 |
生息地 | 北アメリカ |
時代 | 白亜紀後期(7450万年前) |
繁殖形態 | 卵生 |
ビスタヒエヴェルソルは、アメリカのニューメキシコ州、カートランド累層で発見されました。
ティラノサウルス上科の獣脚類の恐竜です。
ビスタヒエヴェルソルの標本は、成体と亜成体の、部分的な頭骨と体骨格が始めに見つかっており、その後完全な形の頭骨が発見されています。
引用:Wikipedia
ビスタヒエヴェルソルの特徴
ビスタヒエヴェルソルは、完全な形の頭骨が見つかっていることから、特徴も頭骨から分かるものがほとんどです。
鼻骨に高さがある
ビスタヒエヴェルソルの特徴としては、他のティラノサウルス類に比べて、鼻骨が上下に広く高さがあるという点です。
※ビスタヒエヴェルソルの鼻骨
引用:ひとり古生物祭り
※ティラノサウルスの鼻骨
引用:ひとり古生物祭り
ビスタヒエヴェルソルの鼻骨が、他のティラノサウルス類より高さがある理由は明らかにされていません。
歯の本数が多い
ビスタヒエヴェルソルの歯の本数は64本です。
ティラノサウルスの歯の数は諸説ありますが、50~60本程度とされているので、それよりも多い数となっています。
また、顎の骨格がしっかりしており、骨と骨の結合部分が強化されていることから、顎はかなり頑丈であったと考えられています。
その他の特徴
頭骨の目の上の部分に開口部があることや、下顎に沿って隆条があることも、他のティラノサウルス類にはあまり見られない特徴となっています。
ビスタヒエヴェルソルはティラノサウルス科?
ビスタヒエヴェルソルはティラノサウルス上科ですが、実はティラノサウルス科には含まれていません。
ティラノサウルス科は、ティラノサウルス上科の中に含まれている分類です。
引用:Wikipedia
この図を見て分かる通り、ティラノサウルス上科の中で、ビスタヒエヴェルソルとティラノサウルス科は別の分類となっています。
ビスタヒエヴェルソルの名前が記載されてから、その分類については二転三転してきました。
当初、ビスタヒエヴェルソルはティラノサウルス科ではないとされていたのですが、2013年の系統解析により、ティラノサウルスに近縁であるダスプレトサウルスよりもティラノサウルスに近いという結果が発表され、ティラノサウルス科とされました。
引用:ダスプレトサウルス
しかし、ビスタヒエヴェルソルは、ティラノサウルス科の中では歯の本数が64本と多く、これは原始的な特徴であり、ティラノサウルス科であるということが疑問視されていました。
そして2016年の系統解析で、やはりビスタヒエヴェルソルはティラノサウルス科ではないという結果となり、科の外に出されることとなったのです。
ビスタヒエヴェルソルの大きさ
ビスタヒエヴェルソルの全長は8~9m、重さは2t程であったと推定されています。
※ビスタヒエヴェルソルと人との比較
引用:恐竜図鑑
その後現れるティラノサウルスは、全長が約12m、重さが4~7t程ですから、ビスタヒエヴェルソルよりティラノサウルスのほうが一回り程大きいですね。
※ティラノサウルスと人との比較
引用:恐竜図鑑
ビスタヒエヴェルソルの餌
ビスタヒエヴェルソルの食性は肉食です。
同じ白亜紀後期の北アメリカに生息していた植物食恐竜である、ペンタケラトプスなどを捕食していたと考えられています。
引用:ペンタケラトプス
ペンタケラトプスは全長6~8mで、体重は4~7tと推定されている恐竜です。
ビスタヒエヴェルソルの名前の意味
ビスタヒエヴェルソルの名前は、「ビスタヒの破壊者」という意味です。
ビスタヒが、アメリカの先住民族であるナバホ族の言葉で、「干しレンガの材料が採れる(粘土層のある)場所」を意味します。
エヴェルソルが、古代ギリシャ語で「破壊者」を表します。
種小名のsealeyiは、古生物学者のH.G.シーリーへの敵名です。
ちなみに、ティラノサウルスは「暴君トカゲ」という意味ですが、ティラノサウルス類が恐れらる存在だったというのが、名前から理解できますね。
他の恐竜の化石と思われていた?
ビスタヒエヴェルソルは、1990年に頭骨と体骨の一部が発見されました。
しかし、当初その標本はアウブリソドンのものとされていました。
アウブリソドンとは、見つかっているのが歯の化石のみで、その歯の特徴から小型の原始的なティラノサウルスの一種と推定されていた恐竜です。
そして、1992年に亜成体の頭骨と体骨の一部が発見され、さらに1998年に完全な頭骨が発見されました。
これらの標本を再調査し、2000年に、これがアウブリソドンではなく、ティラノサウルス科のダスプレトサウルスに近い新種ではないかという論文が発表されたのです。
その後、2010年にビスタヒエヴェルソルの名前が記載されることになりました。
まとめ
ビスタヒエヴェルソルについて解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。
・ビスタヒエヴェルソルの特徴は鼻骨が高いことと、歯が64本と多いこと
・ビスタヒエヴェルソルの全長は8~9m、重さは2t程度
・ビスタヒエヴェルソルは肉食
・ビスタヒエヴェルソルの名前の意味は「ビスタヒの破壊者」
ビスタヒエヴェルソルは、当初別の恐竜だと思われていたり、新種だと分かってからもティラノサウルス科に属されたり外されたりと、状況が変わっています。
もうすでに滅んでしまった恐竜たちについては、これが絶対正しいということはないでしょうから、また研究が進むにつれて別の見解が出てくるかもしれませんね。