アロサウルス と ティラノサウルス
どちらも肉食恐竜として広く認知されている恐竜だと思います。ですが、具体的な両者の違いって意外と知らなくないですか?
「似ている気がするけどなにが違うんだろう?」
「戦ったらどっちが強いんだろう?」
こんな疑問を持った方も多いのではないでしょうか。
この記事ではアロサウルスとティラノサウルスを様々な観点から比較し、さらに戦ったらどっちが強いの?という疑問にも答えを出しています。
これを読めばアロサウルスとティラノサウルス、どちらの恐竜もより魅力的に感じられるようになるはずです!
目次
アロサウルスとティラノサウルスは生きた時代が違う
まずアロサウルスとティラノサウルスは生息していた時代が違います。
アロサウルスはジュラ紀後期、ティラノサウルスは白亜紀後期に生息していました。
引用:福井県立恐竜博物館
アロ サウルス |
ジュラ紀 後期 |
16120万年前 ~ 14550万年前 |
ティラノ サウルス |
白亜紀 後期 |
9960万年前 ~ 6550万年前 |
世代としては実に数千万年も離れているんですね。(アロサウルスの方が先輩にあたります。)
そのためアロサウルスとティラノサウルスが直接対決で戦うようなことは、残念ながらなかったようです。
ではこの両者の生きた時代の、
- アロサウルスのいたジュラ紀後期
- ティラノサウルスがいた白亜紀後期
がどういった時代なのか、ここから詳しく説明していきます。
それぞれがどんな時代だったかを知ることで、より違いが見えてくるかと思います。
アロサウルスのいたジュラ紀後期とは
ジュラ紀は火山の活動が活発で、二酸化炭素の濃度が高く、現在よりも高温・多湿でした。また雨も多かった時代です。
その影響もあってか、動物も植物もどんどん大型化していきました。
恐竜においても例外ではありません。例えば竜脚類と呼ばれる草食恐竜は大型化した植物に合わせるような形で超大型化していきました。たとえばディプロドクスなどは、体長数十メートル級の恐竜です。
【ディプロドクス】
ジュラ紀後期、北アメリカ
27~35m、主な種 D. carnegii
ディプロドシダエの大型竜脚類。セイスモサウルスはディプロドクスの一種とされ、最も大きな恐竜の一つである。
それでも体重は10~40tと軽い方pic.twitter.com/rhPHcT7ePw— 恐竜bot (@kyoryudino) October 29, 2020
数十メートルってめちゃくちゃ大きいですよね!!
今となっては叶わないことですが、こんな大きな恐竜が生きている姿を生で見てみたかったです。きっとものすごい迫力だったに違いありません。
ジュラ紀はこんな恐竜たちが、平気でそのへんをのしのし歩いているような世界でした。
またステゴサウルスなどのメジャーな恐竜や、最初の鳥類と呼ばれる始祖鳥もこの時代を生きています。
アロサウルスの生きたジュラ紀後期は、まさに恐竜の時代と言っていい時代だったんですね。
その時代にあって、アロサウルスは最強の肉食恐竜の地位を得ていました。
ティラノサウルスのいた白亜紀後期とは
白亜紀後期は恐竜最後の時代です。というのも、この時代を最後に恐竜は絶滅してしまうからです。
恐竜の絶滅については諸説ありますが、隕石墜落からの気候変動という説が有力ですね。
ですが絶滅の寸前まで、恐竜たちは栄華を極めていました。
この時代にはジュラ紀をしのぐくらいに、メジャーな恐竜がたくさんいます。ティラノサウルスをはじめとしてトリケラトプス、プテラノドンなどなど。
特にトリケラトプスあたりは知名度も高く、草食恐竜ではエース的な存在かもしれません。
【トリケラトプス】
白亜紀後期、北アメリカ
9~10m、主な種T. horridus
3本のツノをもつカスモサウリナエの周飾頭類。
前足は下向きについて、親指、人差し指、中指で体を支えている。pic.twitter.com/6uDnHg3Mnx— 恐竜bot (@kyoryudino) October 30, 2020
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このようにみなさんが知っているメジャーな恐竜の多くが、この白亜紀後期という時代に生きていました。
ティラノサウルスは長い恐竜時代の最後を飾るにふさわしい、スターのような存在と言えるのかもしれません。
ティラノサウルスはこの時代最強の肉食恐竜でした。つまりティラノサウルスは白亜紀後期という恐竜最後の黄金時代において、食物連鎖の頂点に君臨していたわけです。
最強といえば、この二つの恐竜も良く比較されますね。記事にしています。↓ ↓
この点はアロサウルスとどこか似ていますね。
ちなみによくある誤解として「アロサウルスがティラノサウルスの先祖」というものがありますが、そちらは現在の学説では否定されているようです。
ちなみにアロサウルスはT・レックスの祖先ではありません
かつてアロサウルス科はティラノサウルス科の先祖的タクソン(側系統群)に位置すると考えられたが、90年代にはその説は否定され、ティラノサウルス科はコエルロサウルス類に属するものとされた。
Wikipediaよりhttps://t.co/3zzF1anQZk
— 素晴らしいレポートを書いても依頼医が読まなければ宝の持ち腐れに過ぎないと考える放射線☢️診断専門医 (@economics_dr) October 14, 2020
アロサウルスとティラノサウルスの因縁
少し余談なのですが、映画ジュラシックパークの"ジュラシック"は「ジュラ紀の~」を意味します。
でも少し待ってください。
その割にはジュラ紀最強であるはずのアロサウルスに出番がそんなに無いような……?
むしろティラノサウルスは白亜紀の恐竜だから、ジュラ紀にはいなかったはずなのだが……?
ジュラ紀をもとにした世界であれば、本来そこで大暴れするのはアロサウルスの役目のはずです。ですが映画ジュラシックパークではティラノサウルスが暴れまわっていました。
これは、なにかがおかしい。
……もしかしたらアロサウルスは、より派手なティラノサウルスの登場により恐竜界トップスターの座を下ろされてしまったのかもしれません。
だとしたら、なんたる不遇。アロサウルスの歯ぎしりが聞こえてきそうです。
アロサウルスとかいう不遇恐竜
— mocab (@mocab) November 3, 2015
アロサウルスって最近の映像化だとけっこう不遇でかわいそうだった
— チェスオーチェス団 (@LineSeki) August 28, 2014
やはりアロサウルスの不遇っぷりを嘆く声もちらほらあります笑
たしかに「ジュラ紀最強の肉食恐竜」というふれこみに対して、いまいち扱いが悪い気がしてなりません。
おそらくアロサウルスはティラノサウルスに対して、並々ならぬ気持ちがあるのではないでしょうか。
アロ「おのれティラノめ……お前さえ、お前さえいなければっ……!!」
両者の間に浅からぬ因縁が見えてきました!笑
アロサウルスとティラノサウルスの大きさ比較
ともに恐竜が繁栄した時代に生きたアロサウルスとティラノサウルス。
共通点も多いですが、どんなところが違うのかも気になるところだと思います。
ここからは両者の違いについて、詳しく見ていきます。まずは大きさから。
アロサウルスの体長は7.5~12mほど、体重は2~5tほどだと言われています。
肉食恐竜の中では、体長に比べて比較的体重が軽い部類に入ります。そのため、アロサウルスは機敏な動きが可能な恐竜だったと見られています。
ティラノサウルスの体長は11~13mほど、体重は6~9tほどだと言われています。
肉食恐竜のなかでも最大級の大きさを誇ります。アロサウルスとは対照的に体長に対して体重が重く、パワー重視の体だったと言えるでしょう。
体はティラノサウルスの方が大きい
両者の大きさを表にしました。
体長 | 体重 | |
アロサウルス | 7.5~12m | 2~5t |
ティラノサウルス | 11~13m | 6~9t |
体長、体重ともにティラノサウルスの方がアロサウルスよりも大きいですね。特に体重については差が大きいです。
ただし体重に関しては、重ければ良いと一概に言うことはできません。重ければそれだけ動きが鈍くなることにつながるからです。
これはアロサウルスとティラノサウルス、両者の体がそれぞれ異なるコンセプトで進化した、ということなのでしょう。アロサウルスはスピードタイプの体へ、ティラノサウルスはパワータイプの体へと。
例えるなら、同じ車でもスポーツカーとダンプカーでは設計がまるで違いますよね。
スポーツカーならスピードや機動力のため機体は軽くなります。逆にダンプカーであれば積載量を多くするため機体はどうしても重くなります。
どういう使われ方をするかで、当然機体の設計も変わってくるわけです。
アロサウルスとティラノサウルスの体の違いにも同じことが言えるのでしょう。
両者の生態にあった最適な体に、それぞれ進化していったのだと考えられます。
同じ肉食恐竜なのに、体ひとつとってもずいぶんと違いがあるのですね。
アロサウルスとティラノサウルスの特徴比較
アロサウルスとティラノサウルスでは大きさ以外にも様々な違いがあります。
ここでは
- 骨格について
- 歯について
- 前足について
- 感覚器官について
上記4つの違いを説明していきます。
違いをひとつひとつ見ていくことで、同じ肉食恐竜でも両者がはっきりと違う恐竜だということが、より分かってくると思います。
骨格について
大きさのところでも触れたのですが、アロサウルスは体長に比べて体重が軽く、逆にティラノサウルスは体長に対して体重が重いです。これは骨格にも表れています。
アロサウルスの頭蓋骨
引用:Wikipedia
ティラノサウルスの頭蓋骨
引用:Wikipedia
頭蓋骨を比較すると、ティラノサウルスはアロサウルスに比べて、頭蓋骨がかなり太いことが分かると思います。
この骨格の違いは実際、噛む力に如実に表れていて、ティラノサウルスの噛む力はアロサウルスの7倍近くあったと言われています。
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>>アロサウルスの化石は販売されてる?展示されてる博物館は?
歯について
同じ肉食恐竜ですが、アロサウルスとティラノサウルスでは歯についても違いがあります。
アロサウルスについては歯が細く、薄いです。
引用:恐竜の歯化石から、何を食べていたか分かる!? | 恐竜化石に関するコラム
肉を裂いたり、出血させたりするのに適した形状といえます。
おそらく一噛みで一気に敵を倒すような戦いではなく、スピードと手数で勝負するような戦い方をしていたのではないでしょうか。
また、完全に捕食相手を絶命させずに、必要な分だけ齧って食べていた可能性もあるようです。そうすれば同じ個体を相手に何度も捕食できるので、なかなか賢い生き方ですよね。
対してティラノサウルスの歯は長さ、太さともアロサウルスよりも大きいです。
引用:恐竜の歯化石から、何を食べていたか分かる!? | 恐竜化石に関するコラム
この大きな歯と顎の力が合わさることで、ティラノサウルスは獲物の肉を骨ごと噛み砕いていたと考えられています。ティラノサウルスの噛みつきはまさに一撃必殺の威力があったと言えるでしょう。
↓ ↓こちらの記事でもっと詳しく書いています↓ ↓
前足について
前足については、かなりはっきりとした違いがあります。まずは指の数。アロサウルスは3本指であるのに対し、ティラノサウルスは2本指です。
こちらはアロサウルスの前足。
引用:Wikipedia
3本のしっかりとした指があり、かぎ爪が発達しているのが分かるかと思います。またアロサウルスは他の肉食恐竜に比べて前足自体が大きく、前足を武器として有効に活用していたと見られています。
これはティラノサウルスの前足です。
引用:図鑑 / 恐竜のしっぽ
指が2本しかなく、アロサウルスと比較すると爪もあまり大きくはありません。
また前足自体もかなり小さいです。武器としてみると若干頼りなくも見えます。
ですがティラノサウルスはそのあり余るパワーでこの前足でもかなりの破壊力を出せたそうです。恐るべしティラノサウルス。
参考記事
感覚器官について
視覚や嗅覚などの感覚器官についてはアロサウルスもなかなか優れていたようですが、ティラノサウルスはさらにその上をいっています。
ティラノサウルスには
・立体視が可能な視覚
・全恐竜でトップクラスの嗅覚
・低周波を聴きとれる聴覚
・これら感覚器官の情報を処理できる優秀な脳
がありました。
おそらくティラノサウルスの狩りは、これら優秀な感覚器官を駆使して獲物を捕捉し、じっと待ち伏せて必殺の一噛みで終わらせる、というスタイルが多かったと見られています。
ティラノサウルスは実はパワーだけでなく、頭脳に優れた恐竜だったのです。
アロサウルスとティラノサウルスはどちらが強いのか
生きた時代の違いもありますし、実際には戦うことはなかったアロサウルスとティラノサウルス。
もし戦ったらどちらが強いのか?気になりますよね。もちろん推測の域を出ませんが、ここまでの情報をもとに、考えてみたいと思います!
スピードならアロサウルス
体重や骨格の違いから、スピード勝負であればアロサウルスが優勢なのは間違いないでしょう。
むしろティラノサウルスはイメージに反して、意外と鈍重な恐竜だったのでは?という説もあるくらいです。
機敏な動きを駆使して、噛みつきや前足の爪で少しずつダメージを与えていくような戦い方がアロサウルスの勝ちパターンであるように思います。
ボクシングで例えれば、フットワークを使ってジャブをこまめに当てていくタイプでしょうか。薬師寺保栄みたいな。(伝わりますか?笑)
ですので対ティラノサウルスを想定すると、とにかくティラノサウルスの攻撃を避けまくり、コツコツ攻撃を当てていくことが重要です。
一発の重さでは到底かないません。手数で勝負。
スピードを活かしてティラノサウルスを翻弄できればアロサウルスが勝利できるでしょう!
パワーならティラノサウルス
逆にパワーであればティラノサウルス優勢となるのは間違いありません。
恐らく生物の歴史上を見ても他に類を見ないほどの噛む力で、急所に噛みつくことさえできれば一撃で戦いを終わらせるポテンシャルがあります。
こちらもボクシングで例えれば一発狙いのハードパンチャーに似ています。アロサウルスが薬師寺なら、ティラノサウルスは辰吉丈一郎でしょうか。(伝わりますか?笑)
こちらも対アロサウルスを想定すると、とにかく機敏なアロサウルスをいかにして捉えるかが重要になります。
考えられる戦法は2つ。待ち伏せ と カウンター です。
待ち伏せに関してはティラノサウルスの十八番ですね。優秀な感覚器官を駆使して必殺の噛みつきで先制攻撃。
これが決まればアロサウルスは何もできないまま負けてしまうでしょう。
次に考えられるのがカウンター。アロサウルスは一発の攻撃力はそこまで大きくありません。
ですので、アロサウルスの攻撃を何発かもらうのを覚悟で、カウンターの噛みつきを当てる作戦です。肉を切らせて骨を断つ、ですね。
この2つの作戦のいずれかが決まればティラノサウルスが勝利するでしょう!
戦ったらティラノサウルスの方が強い?
では結局どっちが強いの?という話ですが、恐らく何度か戦えばティラノサウルスの方が勝率が高いと予想します。
理由としては
・アロサウルスが勝つためには、一回も攻撃を受けないことが必要(一発もらえば即死する可能性が高い)
・アロサウルスの攻撃ではティラノサウルスに一発で致命傷を与えるのは難しい
・ティラノサウルスには必勝パターン待ち伏せがある
このように、アロサウルスが勝つためにはかなり厳しい条件をクリアする必要があるからです。
これは例えるならルールが公平ではないゲームのようなものです。
アロサウルスとティラノサウルスの戦いをゲームのようにルールで表現してみます。
アロサウルス勝利条件
10回攻撃を当てる/1回でも攻撃を受けたら敗北
ティラノサウルス勝利条件
1回攻撃を当てる/10回以上攻撃を受けたら敗北
数字は適当ですが、両者の勝利条件はこんな感じになるでしょうか。
はい、全然公平じゃないです。
アロサウルスがいかに厳しい戦いを強いられているかお分かりいただけたかと思います。
アロサウルスは10回攻撃を当てるまで、一度もミスを許されないのです!!
さすがにこの条件の差を覆すことは難しいと思います。
ですので、何度か戦えばアロサウルスが勝つことも可能性としてはあるかもしれませんが、ティラノサウルスが勝つことの方が多くなると予想します!!
タイプは違うがどちらも世代最強のハンターだった
ここまでアロサウルスとティラノサウルスを色々な観点から比較してみましたが、いかがだったでしょうか。まとめると
・アロサウルスとティラノサウルスは生きた時代が違う
・アロサウルスはスピード重視の機敏な肉食恐竜
・ティラノサウルスはパワーと頭脳に長けた肉食恐竜
・戦ったら恐らくティラノサウルスの方が強い
このように、ともに世代を代表する肉食恐竜のアロサウルスとティラノサウルスですが、その特徴はかなり違うということがお分かりいただけたのではないでしょうか。
肉食恐竜は食物連鎖の頂点であり、その時代のいわば「顔」ともいえる存在だと思います。
ジュラ紀後期、白亜紀後期という2つの恐竜黄金時代において「顔」を張っているアロサウルスとティラノサウルス。どちらも世代の顔にふさわしい、最強のハンターでした!
他のティラノサウルスに関する記事はこちらでまとめています。